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現実に右往左往しながら、ときどき動画を作る人の記録。

余白の話

PV系の動画や手描き系の動画にそれぞれ展開の緩急があるように、物語にも「余白」というものがある。

思いついたときに、さっと取り出した紙とペン。開いたテキストエディタ。いや、そもそもプロットすら書かずに、いきなり編集ソフトを起動して作成にとりかかる人もいるかもしれない。しかし、いずれにしろ最初は何も書かれていない。まっさらだ。そこに文章を付け足していく。書いて、消して、書いて、消して、書く。

そうしていると、何も無かったところが段々と埋まってくる。何も無いところが、削られていく。

やがてある程度形になっても、心の内では「もっと埋めたい」・「もっと書きたい」と思うことがある。だが、私はそこでいったん手を止める。一歩後ろに下がって、もう一度読んでみる。すると思いのほか、紙が、テキストエディタが、編集ソフトのタイムラインが、きゅうくつである。どこか、落ち着きがない。

「余白」が、少ないのだ。

説明のしすぎ・設定の書きすぎ・まわりくどすぎる言い方…
余白が少ない原因はそのときによって異なるが、これでは見る人が自分の思い浮かべたことを綴れる場所がなくなってしまう。見ている間、私の書いた言葉だけでその人たちの余白が埋まってしまう。

これはいけない。

だから、その後私は言葉を削る。削って、消して、余白を作る。

こんなやり方をしているものだから、私の一連のシリーズは他の人たちが作ったノベマスに比べると、文章量が少ない。そして、良く言えば「淡い物語」だが、悪く言えば「どこか盛り上がりに欠ける話」になる。


しかし、その話を私以外に好きだと言ってくれる人たちがいる。幸せなことである。

寄せられたコメントを、私は自分の中の余白に書き足す。私が書いた言葉と、彼らが書いた言葉で余白はなくなり、一つのまとまりが生まれる。

これで、その作品はようやく完成となる。自分で作っただけでは、まだ未完成なのだ。
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